マイクロソフトとASUSの共同開発で携帯ゲーム機市場に参戦
マイクロソフトからXbox初の携帯機「ROG Xbox Ally」が発表された。
開発はマイクロソフトとASUS共同で行われ、カスタムされたWindows11を搭載している。
この発表は2025年6月9日に開催された「Xbox Gaming Showcase 2025」で行われ、携帯ゲーム機市場に新たな勢力が参入することが明らかになった。
ROGの名前が入っていることからも分かるように、この製品はASUSの「Republic of Gamers」ブランドとマイクロソフトの技術力を融合した画期的な製品だ。
現時点でわかっている性能やサイズなどをこれまで発表された携帯機と比較して詳しく見ていこう。
なぜXboxの携帯機が必要だったのか
Xboxの携帯機はかねてから開発が示唆されていた。
マイクロソフトにとってもSteam DeckやROG Ally、そしてNintendo Switchが牽引していた携帯機市場は見逃せるものではなかった。
ASUS上級副社長のShawn Yen氏によると、「携帯ゲーム機を出してもゲームライブラリに欠けているASUSと、ゲームライブラリは豊富だが携帯ゲーム機の経験がないMicrosoft」という両社が補完し合う形で今回の協業が実現したという。
また、携帯機からPCゲームに入ってもらうことでより裾野を広げる選択肢となる。
クラウドゲーミングサービス「Xbox Cloud Gaming」との連携により、本体だけでは動作しないタイトルもストリーミングで楽しめる可能性がある。
ROG Xbox Ally、Steam Deck、Switch2のスペック比較

今回発表されたROG Xbox AllyをSteam Deck、Nintendo Switch2と比較した表を作成した。
項目 | ROG Xbox Ally X | ROG Xbox Ally | ROG Ally X | Steam Deck OLED | Nintendo Switch 2 |
---|---|---|---|---|---|
プロセッサ | Ryzen AI Z2 Extreme | Ryzen Z2 A | Ryzen Z1 Extreme | AMD APU Z1 Extreme | NVIDIA Tegra T254 |
メモリ | LPDDR5X-8000 24GB | LPDDR5X-6400 16GB | LPDDR5X-7500 24GB | LPDDR5 16GB | 12GB |
ストレージ | 1TB | 512GB | 1TB | 512GB-1TB | 256GB |
ディスプレイ | 7インチ 1920×1080 120Hz | 7インチ 1920×1080 120Hz | 7インチ 1920×1080 120Hz | 7.4インチ 1280×800 90Hz | 8インチ 1920×1080 120Hz |
バッテリー | 80Wh | 60Wh | 80Wh | 50Wh | 20wh |
重量 | 715g | 670g | 678g | 640g | 約534g |
OS | Windows 11 Home(カスタム版) | Windows 11 Home(カスタム版) | Windows 11 Home(カスタム) | SteamOS | Nintendo OS |
価格 | 未発表 | 未発表 | 139,800円 | 約8-10万円 | 49,980円 |
Ryzen AI Z2 Extremeとは?驚異的な性能を実現

Ryzen AI Z2 ExtremeのGPUは、最新のRDNA 3.5アーキテクチャを採用した**16CU(Compute Units)**構成の内蔵グラフィックスを搭載している。これは、前世代のRyzen Z1 Extreme(12CU, RDNA 3)を上回る設計だ。
公称のTFLOPS値(浮動小数点演算性能)はAMDからは公式に発表されていないものの、Z1 Extremeが最大8.6 TFLOPS(理論値)に達していたことから、Z2 Extremeでは最大10TFLOPS近い演算性能に達する可能性もある。
なお、Z1 Extremeと同様、実動作ではTDPや冷却性能により若干下がることが想定されるが、それでも以下のような比較ができる:
- GPU性能(理論値)
- Ryzen AI Z2 Extreme:未発表(16CU / RDNA 3.5世代、Z1比+33%超)
- Ryzen Z1 Extreme:8.6 TFLOPS(12CU / 約2.7GHz想定)
- PS5 10.28 TFLOPS
- PS5 Pro:16.7 TFLOPS
- PS4:1.84 TFLOPS(18CU / GCN)
- Steam Deck:1.6 TFLOPS(8CU / RDNA 2)
つまり、Z2 ExtremeはSteam Deckの約5倍、PS4の4〜5倍以上でPS5に迫るのグラフィック演算性能を持つ可能性がある。
これにより、最新のAAAゲームタイトルを1080p解像度・高画質設定でも快適にプレイできる携帯ゲーム機として、非常に高いポテンシャルを持っているといえる。
価格戦略:これまでで最も安価になる可能性
マイクロソフト関係者は「これまでで一番安い」というコメントを残しており、Steam Deckより安くなる可能性がある。現在の市場価格を考慮すると:
- Steam Deck: 約6-10万円
- Nintendo Switch 2: 49,980円
- ROG Ally X: 139,800円
- ROG Xbox Ally予想価格: 約7-12万円
現行機であるROG Ally Xが14万弱なので、通常であれば同様の価格になるが、XBOXファミリーの一つとして戦略的な価格にしてくる可能性もある。
もしROG Xbox AllyがSteam Deckより安価に設定されれば、Nintendo Switch2とSteam Deckの中間価格帯を狙うことになる。これはSwitch2にとっても相当な脅威となるだろう。
クラウドゲーミングで可能性が無限大に

ROG Xbox Allyシリーズの大きな特徴として、クラウドゲーミング対応がある。Xbox Cloud Gamingとの統合により、本体スペックを超えたゲーム体験が可能になる。
GeForce Nowのようにクラウド上で動作させることで、ROG Xbox Ally上だけでは動作させられないソフトも動作できる可能性がある。これにより下記の恩恵が受けられる:
- 最新AAAタイトルもストリーミングで即座にプレイ可能
- ローカル処理とクラウド処理の使い分けでバッテリー効率向上
携帯ゲーム機戦国時代の到来
Nintendo Switch 2が2025年6月5日に発売となったばかりで、まさに携帯ゲーム機の戦国時代ともいえる状況だ。各社の特徴を整理すると:
Nintendo Switch 2の強み:
- 任天堂独占タイトル
- 軽量コンパクト設計
- 低価格
ROG Xbox Allyの強み:
- Windows PC互換性
- Xbox Game Passとの深い統合
- Steam、Epic Games Store、Battle.netなど複数プラットフォーム対応
- クラウドゲーミング統合
Steam Deckの強み:
- SteamOS最適化
- Valveのサポート
- 豊富なPCゲームライブラリ
まとめ:ゲーム業界の新たな局面
ROG Xbox Allyシリーズの登場により、携帯ゲーム機市場は新たな競争段階に入った。
Nintendo Switch 2の独占タイトルによる差別化に対し、ROG Xbox AllyはPCゲーミングエコシステム全体との統合で対抗する戦略だ。
価格次第では、従来のゲーム機の枠を超えたポータブルPCとして、幅広いユーザー層にアピールできる可能性がある。
2025年ホリデーシーズンの発売に向けて、携帯ゲーム機市場の勢力図が大きく変わることは間違いないだろう。
特に、AI機能を活用した新しいゲーム体験や、クラウドとローカルのハイブリッド処理による革新的なゲーミング体験が期待される。
ゲーマーにとって選択肢が増えることは歓迎すべきことであり、今後の展開が非常に楽しみだ。
参考記事: