元SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)社長である吉田修平氏がEasy Alliesのポッドキャストに登場し、先日発表されたNintendo Switch 2について辛辣な見解を述べました。
特に注目を集めたのは、「Nintendo Switch 2では任天堂が彼らのアイデンティティを失いつつある」という発言です。
元SIE吉田修平氏による発言

吉田氏によると、任天堂は従来「新しい遊び方をハードウェアと共に届ける」ことを重視してきた企業でしたが、今回のSwitch 2は単に性能のアップグレードが中心となっており、これまでの任天堂らしさが失われつつあるとのことです。
「私にとっては、任天堂からのメッセージは矛盾を感じるものでした。ある意味で、任天堂は彼らのアイデンティティを失いつつあると思います。私の理解では、任天堂は常に新しい体験を創造し、ハードウェアとゲームを一体として設計することで、素晴らしい新体験を生み出してきました」
「しかしSwitch 2は、私たちが予想していた通り、単に『より良いSwitch』です。画面は大きく、プロセッサはより強力で、解像度は高く、4K、120fpsに対応しています。彼らは他のプラットフォームと同じように、ハードウェア担当者から配信を始めました。より良いSwitchであるため、Switch 2の核となるコンセプトは『より良くした』ということであり、これは他の企業がいつも行っていることです」
吉田氏はさらに、Nintendo Switch 2で発表されたサードパーティ製ゲームについても冷ややかな反応を示しました。「個人的には、みんなががっかりしなかったので少し失望しました。なぜなら、みんな『より良いSwitch』としてのSwitch 2を望んでいたからです」と、皮肉を込めて述べています。
任天堂は本当にアイデンティティを失ったのか?

吉田氏の発言に対して、「実際にそれは間違っているとも言えない」という見方もあります。
これまでの任天堂は常にハードの形状を変え続け、革新的な遊び方を提案してきました。
任天堂ハードの歴史
- 1983年 ファミリーコンピュータ:初めて家庭に普及したゲームコンソール
- 1990年 スーパーファミコン:ファミコンをパワーアップ。コントローラのボタンの数も増加
- 1996年 NINTENDO64:初めてのアナログ入力となる3Dスティックを備えた
- 2001年 ゲームキューブ:ディスク媒体に変更。コントローラー形状もAボタンが中心の独自形態に変更
- 2006年 Wii:リモコン型の革新的なコントローラーで一大ブームを巻き起こす
- 2012年 Wii U:「ゲームパッド」を使い、手元の画面も見ながら非同期で遊ぶスタイルを提案
- 2017年 Switch:「携帯型」と「据え置き型」を「スイッチ」する革新的なコンソール。コントローラーも本体から取り外して使用できる
上記以外にも、1980年に発売された「ゲーム&ウォッチ」に始まる携帯端末シリーズや、ファミコンのディスクシステム、64DDなど周辺機器でも常に新しい取り組みをしてきたのが任天堂の特徴でした。
Nintendo Switch 2の新機能
新ハードであるNintendo Switch 2では、初代Switchから性能面で大幅パワーアップしたものの、新機能と呼べるものは主に以下の2点です:
- ジョイコンのマウス機能:Joy-Con 2は側面を下に向けて滑らせることでマウスのような操作が可能になりました。左右どちらのジョイコンもマウス操作に対応しており、この機能を活かした新しいゲーム体験が期待されています。
- ゲームチャット機能:本体に内蔵されたマイクを使って、ゲームをプレイしながら最大12人のフレンドとボイスチャットを楽しめる機能です。新たに追加された「Cボタン」で簡単に開始できます。USBカメラ(別売)を接続することでビデオチャットも可能になります。
確かに、これまでの任天堂ハードの革新性から比べれば、比較的大人しい進化と言えるかもしれません。
アイデンティティは失われたのか?考察
しかし、任天堂の歴史を振り返ると、DSから3DSへの進化のように、革新的なハードから派生的な機能追加バージョンも発売されてきました。3DSも大ヒットした経緯があります。
今回のNintendo Switch 2は「性能の大幅パワーアップ」「ジョイコンのマウス機能」「ゲームチャット」がメインとなりますが、これらの機能を使ってどれだけ新しいゲーム体験を生み出すことができるかが、結局のところは焦点になってきます。
吉田氏も「Drag X Drive(任天堂の車椅子バスケットボールゲーム)は非常に任天堂らしくて、とてもワクワクしました」と述べているように、マウス機能やカメラ周辺機器を活用したゲームでは任天堂らしい新しい体験が期待できます。
吉田修平氏のこれまでの任天堂に対するコメント
吉田修平氏は過去にも任天堂について様々な発言をしてきました。元ソニーの幹部としての立場がありながらも、客観的な視点で評価することがあります。
かつてはソニーと任天堂が共同開発していた「Nintendo PlayStation」の試作機について語った際には、開発中のゲームが存在していたことを明かし、「シューターみたいなゲームでした」と述べています。任天堂とソニーの歴史的な関係については詳細に語ることが多く、業界の歴史を知る人物として貴重な証言を残しています。IGN Japan
また、吉田氏は任天堂の宮本茂氏との交流についても触れており、E3のイベントで展示ゲームについて話し合ったことや、「Horizon Zero Dawn」に対する宮本氏の反応などについて語っています。
競合企業の幹部でありながらも、任天堂のゲーム開発へのアプローチを尊重する姿勢が見られます。
まとめ
- 元SIE社長の吉田修平氏は、Nintendo Switch 2について「任天堂がアイデンティティを失いつつある」と批判
- Switch 2は主にジョイコンのマウス機能とゲームチャット機能+性能向上が中心となっているが、これらの新機能をどう活かすかが重要
- 任天堂はDSから3DSへの進化のように、大幅な革新ではない派生モデルでも成功してきた実績がある
現時点で「任天堂はアイデンティティを失いつつある」と断言するのは時期尚早でしょう。
確かに革新性の度合いは、これまでの任天堂ハードと比較すると控えめかもしれませんが、マウス機能やゲームチャットを活用した新しいゲーム体験がどのように展開されるかが、今後のSwitch 2の評価を決める鍵となるでしょう。
任天堂の真価は、ハードウェアそのものよりも、そのハードウェアを活用した新しい遊びの提案にあります。Switch 2が発売され、実際のゲーム体験が明らかになってから、改めて評価するべきではないでしょうか。
Nintendo Switch 2は2025年6月5日に発売予定です。