2025年4月2日の任天堂ダイレクトで発表されたNintendo Switch 2の販売予定地域には「日本、北米地域、欧州地域、豪州地域、アジア地域(中国を除く)」と明記されています。中国を含む海外への転売対策として日本国内向けの「日本語・国内専用」モデルも用意されることになり、大きな注目を集めています。Yahoo! News

13億人以上の人口を持つ巨大市場である中国が除外された理由について、多くの憶測が飛び交っていますが、今回はその背景に迫ります。

中国市場を除外した最大の理由はゲーム規制

中国当局による厳しいゲーム規制

中国では2000年代初頭から家庭用ゲーム機に対する厳しい規制が敷かれてきました。2000年に「関于開展電子遊戯経営場所専項治理的意見」(電子ゲーム経営場所の整頓に関する意見)が発布され、国内外問わず家庭用ゲーム機の製造・販売が禁止されていた時期もあります。balconia Shanghai

規制は2013年に一部緩和されましたが、それでも中国でゲームを販売するには中国政府からの審査を通過し、「版号」と呼ばれるライセンスを取得する必要があります。これは厳格な審査で、政治的内容や暴力表現など社会に悪影響を及ぼす可能性のある内容が含まれていないかが精査されます。

現行のNintendo Switchでも、中国で正式に販売されているゲームタイトルはグローバル版と比較して極めて少なく、ビジネスとして成立しづらい状況があります。

任天堂と中国市場の歴史

任天堂は過去にも中国市場への参入を試みましたが、うまくいかなかった歴史があります。ゲームキューブ時代には中国での販売を試みたものの、規制の壁に阻まれました。

Nintendo DSも中国で販売した経験がありますが、スマホゲームやオンラインゲームが主流の中国市場では大きな成功を収めることができませんでした。周来友オフィシャルブログ

最新のNintendo Switchは中国のテンセントと提携して2019年12月に中国市場に正式参入しましたが、2024年11月にテンセントは2026年までにNintendo Switchのオンラインサービスを段階的に停止すると発表しています日本経済新聞

この一連の流れを見ると、任天堂はビジネス判断として中国市場でのNintendo Switch 2の発売を見送ったと考えられます。厳しい規制環境下では、多くのゲームが審査を通過できず、コンソール本体を販売してもソフトがほとんど提供できないという状況が予想されるためです。

転売対策としての側面

中国では現行のNintendo Switchも「水貨」と呼ばれる並行輸入品が多く流通しており、正規品よりも人気を集めています。これは中国版には特別仕様が施されており、多くの制限があるためです。

Nintendo Switch 2では、日本国内版として「日本語・国内専用」モデルが用意され、対応言語が日本語のみ、「国/地域」を日本に設定しているニンテンドーアカウントのみ連携が可能で、ニンテンドーeショップで購入できるソフトも制限されるという対策が取られています。これは中国を含む海外への転売対策と見られています。Yahoo! News

製造と販売の乖離

興味深いのは、Nintendo Switch 2は中国やベトナムで製造される予定にもかかわらず、中国では販売されないという点です。製造拠点と販売市場が切り離されているこの状況は、グローバルなビジネス環境と各国の規制の複雑さを物語っています。

HoYoverseのゲームはリリースされない可能性も

中国の会社であるHoYoverse(旧miHoYo)がリリースしている「原神」「崩壊:スターレイル」「ゼンレスゾーンゼロ」などの人気ゲームがNintendo Switch 2でリリースされるかどうかも注目点です。

「原神」はNintendo Switchでのリリースが2020年1月に発表されていましたが、現在も配信されておらず、公式サイトでは対応プラットフォームにSwitchのアイコンが消えています。

最近では声優がHoYoverseのゲームから降板する出来事もあり、政治的な緊張が高まる中日関係の影響も無視できません。Nintendo Switch 2が中国市場で販売されないことにより、HoYoverseのゲームがこのプラットフォームでリリースされる可能性も低くなっていると言えるでしょう。

まとめ

Nintendo Switch 2が中国市場で発売されない主な理由は以下の通りです:

  1. 中国のゲーム規制の厳しさ – 「版号」の取得が困難で、多くのゲームが審査を通過できない
  2. 過去の市場参入の失敗 – 任天堂はこれまでも中国市場への参入を試みたが成功していない
  3. テンセントとの関係終了 – 現行のSwitchでもオンラインサービスが2026年に終了予定
  4. ビジネス的メリットの不足 – 厳しい規制環境下では収益性が見込めない
  5. 転売対策の一環 – 並行輸入品対策として戦略的に除外された可能性もある

中国市場はゲーム産業にとって巨大な可能性を秘めていますが、規制の壁は依然として高く、任天堂のようなグローバル企業でも簡単に乗り越えられるものではないことがわかります。

今後の中国のゲーム規制の動向や、任天堂の中国戦略がどのように展開されるか、引き続き注目していきたいところです。