エレクトロニック・アーツ(EA)が全体で300人規模のレイオフ(解雇)を実施したことが明らかになりました。
この大規模な人員削減の波は、EAの子会社であるRespawn Entertainmentにも及び、約100人の従業員が影響を受けました。
同時に、かねてからファンの間で噂されていた『タイタンフォール』シリーズの新作も開発中止に追い込まれたと報道されています。
さらに皮肉なことに、『Apex Legends』の新たなレジェンド「Sparrow」を1年以上かけて作り上げたクリエイターも、キャラクター公開からわずか24時間後に解雇される悲劇も発生しています。
待ち望まれるタイタンフォールシリーズの新作

『タイタンフォール』シリーズは、Respawn Entertainmentが手がけるFPSゲームで、プレイヤーが巨大なメカ「タイタン」を操作することができる独特のゲームプレイで人気を博してきました。
特に『タイタンフォール2』は、斬新なゲームプレイと優れたストーリーテリングで高い評価を得ています。
同スタジオが開発した人気バトルロイヤルゲーム『Apex Legends』は『タイタンフォール』と同じ世界観を共有しており、多くのファンは『タイタンフォール』シリーズの新作が開発中であるとの噂を期待を持って受け止めていました。実際、業界内では「R7」というコードネームで新作が開発されていると噂されていました。
Titanfall(2014): Respawn Entertainmentが開発したFPS。日本ではPC/Xbox 360版が2014年3月13日に発売。
Titanfall 2(2016): 同じくRespawn開発の続編FPS。グローバルで2016年10月28日に全世界同時発売され、初めてPlayStation 4にも対応しました。キャンペーンと対戦が評価されました。
Titanfall: Assault(2017): Nexus M(Nexonの子会社)が手掛けたスマホ向けRTS。2017年8月10日に北米・欧州でリリースされ、iOS/Android向けに提供されました。開発はParticle City(RespawnとNexonによる協力)で、ゲームはTitanfallの世界観を使ったリアルタイム戦略ゲームです。配信元はNexon。
大規模レイオフによる影響|タイタンフォール新作のキャンセル
タイタンフォール新作のキャンセル
Bloombergの報道によると、今回のレイオフによって「R7」というコードネームで進行していた『タイタンフォール』の新作はキャンセルされたことが明らかになりました。
このプロジェクトは「エクストラクションシューター」として開発の真っ只中だったとされています。
Respawn EntertainmentはXへの投稿で、「初期段階のインキュベーション(作成準備)」中だった2つのゲームをキャンセルし、『Apex Legends』と『STAR WARS:ジェダイ』チームで「ターゲットを絞った調整」を行ったと発表しました。「これらの決断は容易ではなく、影響を受けたすべてのチームメイトに深く感謝している」と述べています。
EAの財務状況と決算見通し
EAの今回の大規模レイオフの背景には、財務的な課題があると見られています。2025年第3四半期の業績発表でEAは、年間の純予約(net bookings)見通しを当初の75億〜71億5000万ドルから、70億〜71億5000万ドルに下方修正しました。主力タイトルである『EA Sports FC 25』の販売不振が原因とされています。
EAの広報担当者ジャスティン・ヒッグス氏はBloombergへの声明で「長期的な戦略的優先事項への継続的な焦点の一環として、将来の成長を促進するためにチームをより効果的に整理し、リソースを配分するための選択的な組織変更を行いました」と述べています。
Apex Legendsの新レジェンド作成者の解雇劇
今回のレイオフでは、『Apex Legends』の新キャラクター「Sparrow」を開発したナラティブデザイナーのHeather Woodward氏も解雇されるという皮肉な出来事が発生しました。
Woodward氏は4月29日に自身が1年以上かけて作り上げた新レジェンド「Sparrow」のデビューをBlueskyに喜びの投稿をしたばかりでした。
射撃の名手として紹介された「Sparrow」は、実名をEnea Davide Guarinoという20歳のキャラクターです。しかし翌30日、Woodward氏は突如として解雇の知らせを受けることになります。
Woodward氏はその後、「ちょっと気まずい話なんですが…Respawnで大規模な人員削減の対象になりました。こういうことは起こりますが、Apexでの仕事は最高で、今までで一番好きな仕事でした。Sparrowを書くのは本当に楽しかったです。これからも何週間もの間、彼について語り続けるでしょう」とBlueskyに投稿しています。
ゲーム業界の大規模レイオフの背景
今回のEAによるレイオフは、2025年に入ってからのゲーム業界における大規模なレイオフの流れの一部とも言えます。業界全体では2025年だけですでに約1,800人が解雇されており、この傾向は2023年から続いています。
2023年には10,500人以上、2024年には14,600人以上のゲーム業界従事者が職を失ったとされています。
この大規模レイオフの背景には、COVID-19パンデミック後の業界縮小によるスタジオの統合や、財務的プレッシャー、投資家からの圧力などが考えられます。特に大手パブリッシャーは、収益性の低いプロジェクトを削減し、より収益性の高いタイトルやライブサービスゲームに資源を集中させる傾向にあります。
Game Developers Conference(GDC)2025の業界調査によると、開発者の41%がレイオフの影響を直接受けており、29%が直接の同僚が解雇されるのを目の当たりにし、18%が他のプロジェクトの開発者が解雇されるのを見てきたと報告しています。
EAとRespawn Entertainmentにとって、今回の大規模レイオフと『タイタンフォール』新作のキャンセルは大きな転換点となります。同社は今後、『Apex Legends』の継続的なアップデートや『STAR WARS:ジェダイ』の新作、共同開発の『STAR WARS ゼロ・カンパニー』などの主力タイトルに注力していくものと見られています。
一方、キャラクターデビューからわずか1日で解雇されたWoodward氏のようなクリエイターの存在は、急激に変化するゲーム業界の厳しい現実を象徴しているといえるでしょう。
ゲーム業界全体が経済的な圧力と構造改革の波の中で、今後どのように進化していくのか、注目される状況が続いています。